ともなが あ希
都会のマンション群に囲まれて、ミホホの家はあります。
こんもりとした木々に隠れるように建っている、古い小さな家。
そして、これまた小さな庭には、そこいら中にチョウチョやバッタ、
ジョロウグモ、ミミズなど虫がたくさん住んでいて、生きもの大好きミ
ホホには、たまらなく魅力的な家でした。
仕事で国中を飛びまわっているミホホのパパは、なかなか家に帰って
来れません。
ですからミホホのママは、ミホホたちがまだ小さい頃から、パパママ
二役をこなすスーパーウーマンでした。
たとえば、
「ママ大変、屋根の下に蜂の巣があるよ。ブーンって大きな蜂がいっぱ
いっぱいいるよ」
「あらまあどうしましょう、アシナガバチだわ。保健所に連絡しましょ
うね。タックン、危ないから近づかないのよ」
「ああん、ママ痛いよう。すぐりのとげとげが刺さっちゃったあ」
「どれどれ見せてごらん。あ、これね。よーし!取れた。ノンノの痛い
の痛いの飛んでいけー」
などなど、ママはてきぱきと対応し、良きママぶりを発揮しました。
さて、この古い家の住人はパパ、ママ、ミホホ、タックン、ノンノの
五人だけではありませんでした。
家の中をわがもの顔に歩きまわる、ゴキブリたちを忘れてはなりません。
生きもの大好きミホホが住むこの古い家に、ゴキブリが住みつくのも
無理はないのですが、スーパーウーマンのママがただ一つ苦手とする生
きもの、それがゴキブリというのも、皮肉なことでした。