子供たちが「むさしの幼稚園」に通いだした年に、保護者向けのサークルができた。
美術・染物・菜園の3つがあって、私は菜園に参加した。
たった1年半の参加だったけど、畝づくりに始まって、種蒔き、苗植え、落ち葉を集めての堆肥作りのほかに、豆腐やコンニャクづくりのワークショップも体験させてもらった。
指導してくださったのは、石巻在住の佐野先生で、無農薬有機農業(試験的に自然農法も)のほかに、草木染や和紙漉きなども手掛けておられ、地鶏の平飼いもされていた。(とても博学で、園長先生は「百のことを知っている博士」だと仰っていた)
佐野先生のお住まいは、石巻山登山口手前の雑木林の中にあり、なんでも自生している雑木の庭で、ミョウガが土から顔を出してるのを初めて見た。
コンニャクのワークショップは先生のお宅の庭で開催され、竹林に自生する蒟蒻芋の掘り出しからスタート。
地面からスーッと伸びた茎や葉を観ることから始まり、洗った芋を、大鍋で沸かした湯の中へ、おろし金でおろし入れるのと、大きな木杓子で混ぜる作業を手分けした。
その横には、丸太を燃やした灰(凝固剤)の缶があった。
出来上がったコンニャクは、小分けして、冷水に取り、各自のビニール袋に詰めて作業終了。
もう30年余りも前のことで、その日の夕食に食したはずが、どう料理したか、どんな味だったかは、すっかり忘れてしまったけど、鍋の中で固まっていく蒟蒻芋を混ぜる木杓子が、どんどん重たくなっていったのだけは記憶している。
アツミセミナーへ
昨夜のアツミセミナーのテーマは、「蒟蒻(コンニャク)」
日本在来種の蒟蒻芋を和玉といい、群馬・栃木・山梨・静岡・広島産の中で、群馬の赤城大玉は、ほとんどゼロ。
蒟蒻芋は、冬に掘り出し(凍らないよう)春にまた植え、3年かけて大きくする。
その工程が待てなくて、改良品種や輸入物が多くなった。
また、蒟蒻芋は夏場に腐ってしまうので、粉にしたものを加工して作られるようになった。
粉には等級があり、値段は、伸ばし倍率と等級で決まる。
和玉を使うところは、粉でなく芋を使う。
◎伸ばし倍率(蒟蒻芋たいしての水の量)
静岡・山梨・・・20~28倍
愛知・・・30倍
関東・・・40~45倍
東北・・・50倍
◎蒟蒻の製法
大造(おうど)・・・
ばた練り(昔ながらの製法で、ゆっくり回転させて繊維を切らずに練り上げる)した原料を容器に流し込み、5,6時間置き、その後手作業でカットしたものをボイルし、一晩かけて冷ます製法。非常に手間と時間がかかるけど、余分な水分や凝固剤が抜け、身のしまった弾力のある味なじみの良いコンニャクができる。
釜蒸し・・・粉を水で伸ばして機械で練り、型に入れて蒸し上げる。
生詰・・・粉を水で伸ばしたものを袋詰めにしてから加熱する(袋の中に水が入ってない)
◎凝固剤
添加物(凝固剤)無しではできないのが、豆腐とコンニャク。
いいものは貝殻焼成カルシウムを使用。(昔は木灰や卵の殻を使っていたが、木灰には環境汚染で使用禁止、卵の殻はアレルギーの問題あり)
一般的なコンニャクは、水酸化カルシウム(石灰)を使っているので、いったん茹でて使用することをすすめている。
◎他
和玉で作ったコンニャクは、皮などが混じり色がつく。
精製した粉は、特級粉ほど白いので、特級以下の粉で作るときは、海草で色付けしている。
伸ばし倍率が多いコンニャクは、時間が経つと水分が抜けて痩せる。
※コンニャクと漬物は、製造許可がいらないので、一般の人も販売できる
セミナーのサプライズとして、「自然の味そのまんま」の和玉100%使用(広島・栃木産)コンニャクをいただいた。
大造製法・貝殻焼成カルシウムの静岡産で、伸ばし倍率が低いコンニャクゆえ、一般のツルンとしたものとは随分違う。
さっそくスプーンでちぎったコンニャクを胡麻油で炒めながら、さらに木杓子で切り分けたら、まっすぐ下にカットできた。
ツルンコンニャクだと、たぶん切れないだろう。
触感も違う。(静岡産だから伸ばし倍率が低い)地域性のある伸ばし倍率はそれぞれの好みだとしても、美味しいコンニャクだった。
「自然の味そのまんま」には、赤城大玉を使った、蒟蒻芋のような丸いコンニャクもあるので、それも味わってみようと思う。
ちなみに、セミナーの試食で出た一般のコンニャク(水酸化カルシウム使用)を食べたら、舌が荒れてしまった。