童話集「木苺 第2号」よりケンとトシの ステップ バイ ステップ ともながあ希・作

 新学期を迎えてぼくは五年生になった。
 春休み、学校へクラス編成表を見に行った時、ぼくとトシがまた同じクラス
なのを見て、ぼくはほんとうに驚いた。
「見ろよケン! ぼくたち、また一緒のクラスだぜ」
 並んで見ていたトシも、うれしいと言うよりなかばあきれて、大声を出したく
らいだ。
「おれたち幼稚園のときからこれで七年目だよな」
 幼稚園の玄関で立ち上がろうとした拍子にごっつんこ、トシとはそれ以来だ。
とぼくは思い出をたどった。
「先生たちさ、よっぽどぼくたち一緒にしたいか、なーんにも考えていないの
どっちかだよな、これって」
 トシのあっけらかんとした声で、ぼくの思い出はかき消された。
 どっちが金魚でどっちがフンか分からないけど、ぼくたちはまた今までどおり、
くっついて行くだけだな。
 道端に転がっていたコーヒーの空き缶を、代わる代わるけ飛ばしながら、ぼく
とトシは学校をあとにした。
 お気に入りの遊び場、ティラノ公園の近くまで来たときだ。
 このごろ時々見かけるようになった、風変わりで気むずかしそうなじいさんが、
公園の角を曲がってやって来る。
「ついてねーよなあ」
 トシは顔をしかめた。
 ぼくたちは、じいさんと目を合わせないように野球帽を深くかぶり直し、両手
をジーンズのポケットにつっこんで、通り過ぎようとした。

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