おくすりは なあに P4

 カーヤは、後ろを振り向いてみました。しーんと静まり返った、見知らぬ道です。
「ああ、どうしよう」
 カーヤは、知らず知らずミュウの手をギュッと握りしめていました。
 見開いたミュウの目が、心細げにカーヤを見上げています。
 おくすり屋さんには、どっちの道を行ったら
いいのでしょう。
 カーヤは、目の前がまっくらになった気がしました。
「おねえちゃん、ア
ーカンさんだよ。ほら、おねえちゃん!」
「えっ!」  カーヤは、ミュウの声でわれに返りました。
 引っ越して来たばかりの土地で、道に迷ったのです。
 小鳥のさえずりが耳に届かなかったのも、無理はありません。
 ミュウの指さす木に、アーカンさんが澄んだ声を響かせていました。
「アーカンさん、おくすり屋さんへ行く道はどっちかしら?」
 カーヤは、大きな声でたずねていました。
「キョロロロロロ・・・、それは今来た道を引き返すのが一番だけれど、近道なら右の道を行
くといいね」 「ありがとうアーカンさん。ミュウ、近道を行こう」
 カーヤには、深く考えている余裕などありませんでした。おばあちゃんの「ひゅー、ひ
ゅー」が耳のそばで大きく聞こえていたのです。
アーカンさんの言う右の道を選ぶと、ふたりは迷いもなくどんどん歩きました。少し
先をアーカンさんが、道案内のように、枝から枝へ飛び移りながら飛んで行きます。
 笹の原を抜けると、大きな池にぶつかりました。道は、池をはさんで向こう岸へ続い
ています。
「ミュウ、どうしよう」
 カーヤが、水面をのぞき込んだ時でした。
「タートル、タートル、出て来てちょうだい!」
 木の上から、アーカンさんの声がひびいたのです。すると、どこかで「チャポン、チャポ
ン」と音がして、何かが池の中に現れました。