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 夏休みも終わりに近づいたある日曜日の夕方、いつもは、おきに入りの畑に出
かけていて家にいない父さんが、今日は珍しく居間でゆっくり新聞を読んでいる。
「父さんボール投げしよう。父さんお散歩行こう」
と、まとわり着いていたひろしが、ちゃっかり父さんのあぐらの中に入りこみ、
父さんの胸に寄りかかってごきげんなの。
 私は、父さんにお茶を持って行きながらひろしをのぞきこみ、からかってみた。
「ひろしの甘えんぼう、お姉ちゃんにもかわって」
「だめ! かほ姉ちゃんは大っきいんだから、ここには入れないの」
「それじゃ、めぐ姉ちゃんにかわって」
 めぐみもそばにやって来て、ひろしをどかせようとする。
「だめだめ、ここはぼくが座るんだ。めぐ姉ちゃんも大っきいからだめ」
 ひろしは、いよいよむきになって父さんにしがみついていく。
   父さんは笑いながらひろしを抱きしめ、お茶を一口飲んだ。
「ああ、うまい。こうしておまえたちの顔を見ながら飲むお茶が、一番うまいな。
今日のお茶は、かほが入れてくれたのか?」
「うん、そうよ」
「かほも、めぐみも、それからひろしも、みんな大きくなったな。特にかほとめ
ぐみは、力が強くなったぞ」
「どうして強くなったってわかるの?」
 私は、父さんのそばに寄って行きながら聞いた。
「そりゃあ、父さんの足を持ってくれる時の、力の入れ具合がちがってきたから
な」
「足を持つって、酔った父さんの足を持つこと?」
「ああ、そうだよ。おまえもめぐみもだんだんと力がついてきて、父さんの足を
持つ時の手の感じが、前よりずっとたくましくなったものなあ」
「ええ! それじゃ父さん、酔っぱらってなかったの?」
「父さんか? 酔っぱらっていたさ」
「だって今、かほたちの手の感じがわかるって」
 私は、頭がこんがらがってきた。