P8 ミホホには、すぐにそれが何なのか分かりました。 それは、男の目の中ですでに息絶えた、リキの姿だったのです。 翌日、パパが出張を切り上げ帰ってみると、ママは出窓の戸を閉め忘 れたことを反省しており、ミホホは、リキの最後をあわれんで泣いてい ました。 タックンは、リキの武勇がいかにすばらしかったか話して聞かせ、ノ ンノは青い顔をして、パパにだっこをせがみました。 パパはノンノを抱き上げ、みんなに優しい笑顔を向けながら言いました。 「なにはともあれ、みんなが無事でほっとしたよ。こういうことならゴ キブリに、番犬ならぬ番ゴキとして家にいてもらうのも悪くないね。ど うだい、ママ?」 「冗談はよしてくださいなパパ。こんなことはもうこれっきり。戸じま りにも充分気をつけますわ」 うんうんと、うなずくパパのそばで、ミホホは涙をぬぐいながら 苦笑いしたのでした。 |
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