Delika&Bakery
「かぜのように はなのように」
国道1号線と並走の市電を挟んだ豊橋公会堂の前に、2011年オープンした『かぜのように はなのように』さんのハード系薪窯パンは、今ごろご紹介するまでもなく、美味しい Deri ともに周知されているお店です。
オープンして間もない頃、公会堂での小市民寄席の帰りに、隣接した「cafe bespoke」で、友人とお茶した時が最初の訪問でした。
市電で使われていた御影の石畳(途中、縁石として国道までつながっているそうです)と木製の建具、積まれた大量の薪(入口上の部屋にも!)、風にそよぐ緑が目にも心地よいコントラストを描く煉瓦の壁、薪窯・・・
店内の壁や天井の土佐漆喰も、すべてDIYで、手で土佐磨きをもされたとのこと。(インテリアから始めるあたり、以前の癖が抜けきっていません ^^;)
店舗に使われる木製の看板は、耐久性を考慮してケヤキや檜を使うことが多い中、敢えてヒバ(檜になりたかったというヒバにはアスナロの別名も有り)を使ったことや、薪窯への拘りと粉やパンつくりへの想い、フランス語の Signifiant Signifie(シニフィアン・シニフィエ)をご自分なりに表した屋号「かぜのように はなのように」のストーリーにも哲学があり、時間が経つのも忘れて聞き入ってしまいました。
パン焼きは、温度や時間との勝負で、お話を伺っている間にも、いくつものタイマーが鳴り響き、場所を入れ替えたり、焼け具合を見たりで、気が抜けない作業が続きます。
冬でも窯の周辺は40℃になるそうで、それでも寒いんだそうです。ひと抱えでは済まない太さの、大量の薪を割って乾燥させる仕事も含め、体力・気力との勝負です。
パンを食べるということは、こうした労働と想いをも一緒にいただくということなんですね。
私自身、年を重ねるごとに、菓子パンよりもご飯パンの方を好むようになり、歯の質も弱くて、固いパンは避けていたりで、玄米や雑穀米をいただく感覚の“大地のカンパーニュ”やクルミのパンを買うことが多かったのです。
また、「クロワッサンはパサパサだから苦手」とか、「バケットは固すぎてねぇ」は、ここに限って、そうではないことが、店主さんの一言で溶けました。
粉も製法も別物と仰る『かぜのように はなのように』さんのバケットの奥深い味わいは、“目からうろこ”でしたし、クロワッサンの食感と味は病みつきになりそうで、ある意味怖い (^^)/…
曜日や時間帯、季節限定でつくるパン(いまだとショコラを使った発酵ケーキも有り・・・PBでなく)があったり、最近は、製粉会社さんとの提携粉「ゆめちから」を使ったパンの種類も増えています。
それぞれがもつ粉を味わってほしいからと、ご飯パンづくりに拘る店主さん。“売れるパン”で収益を求める方向に走るよりも、粉が持つ性質や味わいを生かしてのパンづくりを追求したいという姿勢に、職人気質と哲学が感じられました。
ご家族を大切に思う姿勢や、生きることへの価値の置きどころにも共感したし、「ボクは粉が好きなんですよ~」と、顔を崩して仰ったのが、とても印象的でした。
食道楽時代?に舌を肥やした店主さんは、料理人でもあり、「注文いただければ、大抵の料理を作りますよ」とも。なんとも心強いではありませんか。
(私はイワシのピッツアを注文しましたよ)
レギュラーのピッツア・マルゲリータも美味しいし、最近は豚肉のリエットのピッツアも登場。自家製の生パスタやソース、オリジナルレシピで製造のソーセージ・ベーコンやキッシュの他に、おすすめの食材もあり、ときには量り売りのジャムも種類が豊富です。
チーズの種類に疎い私ですが、空輸できた(船便だと冷凍になる)、この季節しか味わえないフランスやスイスの伝統的なチーズ・モン・ドール(Mont d’Or)は、スプーンで少しずつすくって食べるんだそうで、いろんな食材のストーリーが聞けるのも、買い物の楽しみです。 (2014.1.28 記)
豊橋市八町通2丁目23
TEL:0532-55-1210 | 営業時間 11:00~18:00| 定休:木曜