TALK-TALK タイトル



ナイフを膝に ?!・・・
(2003.10.5)


以前Kitchen 味菜さんのコラムに載せていただいたものです。


ひと頃、某ホテルで結婚披露宴でのエレクトーン演奏をしていました。バブル全盛の時代でしたので、披露宴も華やかに盛大に行われ、また、今の時代ほど若い人のシングル志向もなかったし、 結婚式場も多くはなかったので、春秋のお日柄の良いともなれば、一日10組はざらでした。
披露宴での司会者とエレク トーン演奏のオプションセットの依頼が多く、司会者が足りずに営業スタッフも 駆り出された時期、そのひとりのデビューに立ち会ったお話です。

大らかそうなA氏は、外見に似合わずプレッシャーに弱くて、私が「大丈夫よ」 と励ましても、ますます緊張は高まるばかりでした。 いよいよ披露宴の幕は開きました。まずはご来場者の入場。

 「本日はお日柄もよく・・・」と季節の挨拶も滞りなく済み
 「新郎新婦のご入場!盛大な拍手を !!」

  “ジャンジャージャジャーン”(ワーグナー)と、ウエディングマーチも高らかに厳かに、そして新郎新婦が着席と同時に演奏も終え(きっちり曲の終わりで締めるのが、生演奏の良さ)、会場は水を打ったように静まります。
実は、この瞬間が一番緊張する場面だと思うのですが、かのA氏はご媒酌人ご来賓の紹介を無事に終え、「なぁーんだ、やればできるじゃない」と私。会場の緊張もほぐれたところで、ケーキ入刀と乾杯です。 ファンファーレで盛り上げ、続いて開演の辞。司会よりもひと呼吸先にBGMを入れます。選曲はJ.レノン の『ヒア ゼア アンド エブリホェア』。そして司会者の挨拶。

 「本日、司会を担当しますワタクシは○○と申します。~~~では、皆さまこれよりご歓談となります。 ナイフを膝に ?!・・・(ナフキン!)」 

“どうしよー!”と叫んで頭を抱え込み、演台の下に潜り込んだA氏を励ましながらの披露宴デビューでした。 とんだハプニングでしたが、後日、縁あってA氏のセカンドステージを 再び組むことになりました。もちろん前回の失言を忘れるはずがありません。 デビ ューとは違ったプレッシャーを抱えて、“ジャンジャージャジャーン”
さすがA氏、とても上がってるようには見えない司会ぶりです。やがて開演の辞。

 「本日、司会を担当しますワタクシは○○と申します。~~~それでは皆さまこれよりご歓談となります。 どうぞナイフを膝に ???・・・」

間違えてはいけないと思う余り、かえって自己暗示をかけてしまったのでしょうか。顔を真っ赤にしてうずくまったのは言うまでもありません。 なのに私ときたら励ますどころか、エレクトーンに覆い被さるようにして、お腹の底から押し寄せる爆笑を必死にこらえ、笑える指で『パッヘンベルのカノン』を弾いていたのでした。二度あることは三度ある? さぁ、どうだったんでしょう。

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