川と山の緑を背景に、日帰り湯治の「かよい湯治・一休」と「ひがな湯治・天山」、手打ち蕎麦の「艸楽庵」が郷を成していて、 温泉入浴だけの「かよい湯治・一休」は、檜風呂と野天風呂があり、そぎ落とした中にもダイナミックな空間で、 ゆったりと静かに過ごせる施設です。
冠木門をくぐり、打ち水され石畳のアプローチをもつ「ひがな湯治・天山」は、おとこ湯五湯、おんな湯六湯(内湯・外湯・サウナ(男湯は窯風呂))、 ほかに貸座敷(有料)や談話室、食事の「滋養料理・山法師」と「温泉しゃぶしゃぶ・楽天」、カフェ「うかれ雲」などがあり、 温泉に入っては休憩し、お食事やティータイムにと、ひがな一日のんびり楽しめる施設となっていました。
姥子温泉「秀明館」と同じく、温泉源や泉質、周囲の環境を護るために、シャンプーなどの合成洗剤を使わず、 塩素も使わない代わりに、毎日湯を落として入れ替えているそうで、 館内で焚かれている線香も菊花線香を使うなど、人にも優しい環境を心がけていらっしゃる稀有な温泉郷でした。

心も体もゆるむ温泉と、そこで迎えてくれる人たちの寛容で穏やかな“もてなし”の心配りにも癒され、 その心地よさに時間を忘れてしまいました。
見送ってくださったオーナーさんの、本ものに対する哲学と美意識、最後に飲んだエスプレッソの味と、 お人柄のにじみ出たマスターの笑顔などに、たくさんの大切なことを教えていただいた箱根の旅であったのと同時に、 帰りのルートで通り抜けた数々の箱根温泉宿と一線を画するものがあるとしたら、旅人を迎える人たちの真心ではないかとも思いました。
天山湯治郷 http://tenzan.jp/

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