エントランスの軒を支える太い柱(写真下)は、曳家にした建物の半分と、残した住宅のつなぎ部分の梁を利用したのだそうです。 出が深い軒の両側に使うのでは、却って良さを出せないので、鉄骨の片持ち梁との併用で、柱は片方だけとし、シンボル的な意匠としています。
欅の彫り看板は、「木彫や」の近藤直登氏の手によるもので、 「結」というのは、旧仮名遣いで「ユフ」と振ってありますが、「ゆう」と読み、 「地域社会の皆様の心を結びあい、皆様の心のオアシスとしての憩いの場となれば」という思いが込められて命名されたのだそうです。

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楢村徹氏の活動の地でもあり、古民家再生が浸透している岡山では、杉板を焼いた「焼杉板」が、外壁用の建材として昔から使われ、今回のギャラリーにも使用しています。 白と墨黒のハイコントラストも、焼杉の質感で和らいで見えます。
ギャラリーと管理事務所との間に位置する古井戸は、「結界」を兼ねた庭石のような存在で残されています。


今回の設計では、植栽を含めたエクステリアも計画に入れ、小さくカットした古い瓦をモザイクタイルのように使ったり、曲線を生かしてラインのようにデザインしたり、 鬼瓦をオブジェのように据えたりで、古いものを余すことなく再利用されています。 また、いろんな意匠性の高い建具たちも、高さ調整にデザイン的な工夫が施されて、管理事務所の方で使われていました。

見学会の日は、各方面のアーティストたちが引きも切らずに訪れ、古き良き佇まいの中に、凛とした空気を漂わせながらも主張し過ぎず、作品を生かすギャラリーとして、静かにデビューを待っています。
柿(こけら)落しは、大林記念館 ギャラリー“結”(ユフ)開館記念 「ふるさと作家秀作展」が、下記の日程で開催されますので、どうぞ足をお運びください。


■絵画の部 9月12日(火)〜17日(日)
■書道の部 9月19日(火)〜24日(日)
■写真の部 9月26日(火)〜10月1日(日)

  URL:http://gallery-yuu.jp/
今回の記事をまとめるにあたり、設計士の千木良万里さんに助言をいただきました。 また設計デザインの素晴らしさとともに、建物に対する深い想いと慈しみの心にも触れる機会をいただき、ただただ感謝です。
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