同じ様に、父さんたちには反対されたけど、トシは諦めなかった。
「学校の一大事だし、それを解決してくれるかもしれない松さんと一緒で、その
人の手助けがしたい。土曜日から夏休みに入るし、一生の内のすごい経験にな
るかもしれないので、許可して下さい!」と、食い下がったというんだ。
トシの両親は一応反対なんだけど、「二、三日待て」と、保留にしてあるらし
い。
いつものおおざっぱなトシにしては、すごいねばりだよな。
「おはよう」
トシが、後ろからぼくのランドセルを、バン! とたたいた。
「おおはよう。何か嬉しいことでもあったの?」
「うん、このあいだの見張り番、許可がでたんだよ」
「え、ほんと! ほんとにいいって?」
ぼくは、とても信じられなかった。
「ああ。松さんの言うことをしっかり守って、足手まといにならないようにするな
ら、だってさ」
「へえーすごいな、おまえんちの両親。なんで許してくれたんだ?」
「おれんち父さんがさ、松さんの所へ行って、どんなものか確かめたらしいんだ」
「ふーん、それで?」
「そしたら松さん、前は大きな会社の警備の仕事をしててさ、見回りなんかはお
てのものらしいんだ。それで父さん、安心して許可してくれたってわけさ」
「トシんち父さんすごいなー。ぼくんち父さんなんか、頭っからだめ! だもんな」
「もう一度お願いしてみろよ。ぼくが説得したみたいに、心を込めてさ。こんな
経験めったに無いことだぜ」
「うん、もう一度頼んで見るよ」
その夜の父さんは、トシんちのおじさんとの長い電話のあと、ぼくに見張り番の
許可をくれた。その時、ぼくはなんだかすごく緊張した。