そうと決まったら早い方がいいと、さっそく行くことになった。
 こうちゃんが案内してくれたところは、学校から近い、アパートが立ち並ぶ敷
地で、こうちゃんの友だちが、前に住んでいたところらしい。
 今は空き棟が多いそのアパートの裏には、子供たちの遊び場になっている草地
が広がっていた。
 しろつめくさや、くずの若葉が茂り、うさぎを遊ばせるのにはいい所だよな。
 こうちゃんは、しろつめくさの上に座って、しばらくじっとしていた。
 ぼくたちも、身動きしないで待っていると、ピョン、ピョン、ピョンとグレーのうさ
ぎが一わ、こうちゃんの座っている方へ近づいてくる。
 学校でぼくたちにだっこされたり、さわられるのに慣れているから、やっぱり
人恋しいんだ。
 こうちゃんは、手をのばしてうさぎを抱きかかえた。
 もう一わの姿は見えない。
「少し探してみようか」
 松さんの合図で、敷地内をあちこり探したけど見つからなかった。
「野良犬にでも、やられてないといいがなあ」
 松さんが言うのを聞いていたこうちゃんは、うざぎを抱いたまま、おろおろし
だした。
 そして、松さんの傍にかけより、
「このうさぎ、今から学校へ返しに行ってきます」
と、思いつめたように言ったんだ。
「そうか、その方がいいだろうな。そうするか」
 松さんは、こうちゃんの肩に置いた両手に力をこめた。
「トシ、よかったよな」
「うん、だけど、あと一わ見つかればなあ」
「こんだけ探しても、見つからなかったんだぜ。とりあえず、一わだけでもかえっ
たんだからよかったよ。そうだろう?」
 トシは不満そうな顔をしている。

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