おくすりは なあに P2
 森の家での初めての朝、ふしぎな音で、カーヤは目をさましました。
 素足のままベットから床に降り立ち、その音を探します。家の中ではありません。
 カーヤは、うす緑色のカーテンをそっとあけ、外を見ました。
 庭の向かい側にある木の枝で、赤い鳥が鳴いているのでした。
 カーヤはミュウを起こしに行き、一緒に赤い鳥のキョロロロロロ・・・に聞き入りました。
 町の家では聞いたことがなかった小鳥の歌声に、カーヤとミュウは、この森での生活が 楽しみになりました。
 その澄んだ鳴き声は、赤い鳥が飛び去ったあとも、ふたりの耳にここちよく響いてい
ました。
 起きてきたお父さんに、カーヤは庭で鳴いていた赤い鳥のことを聞いてみました。
「鳴いていたのは、アカショウビンという鳥だよ」
 カーヤとミュウのお父さんは、何でも知っているのです。
「ミュウ。アカショウビンのアーカンさん、この名前どうかしら」
「うん、いいね。アーカンさん、アーカンさん!」
 カーヤとミュウは、自分たちだけの名前をつけて大喜びです。
 温かいミルクとトースト、それに真っ赤なトマト入りサラダの朝食が始まりました。
 カーテンをゆらして訪れる、森からのおいしい空気もごちそうです。
「おばあちゃん、昨夜はとても気分が良さそうでしたわね」
 ミルクのおかわりを手渡しながら、お母さんがたずねました。
「はいね、ぐっすり休みましたよ。ありがとう」
 それを聞いて、みんなはとても幸せなのでした。
 おじいちゃんも今朝は、トーストをもう一枚焼いてもらいました。
「きょうは、これからお母さんとまた町へ行ってくるけど、大丈夫かな?」
 お父さんが、カーヤとミュウにウインクします。
 カーヤとミュウも、両目をつぶってお父さんにウインクのお返しをしました。
「昨夜は、おばあちゃんも落ちついていたし、大丈夫、いってらっしゃい」
 ミルクを一口飲むと、おじいちゃんは笑顔を見せました。
「なるべく早く帰ってきますわ。カーヤ、ミュウをお願いね」
「はい、おかあさん」
 お父さんとお母さんが出かけると、カーヤとミュウは、朝見かけた赤い鳥のアーカン
さんを探すことにしました。