私の頭の中に、またあの魔法使いがもどって来ていた。
 私とめぐみは、台所で夕飯のしたくをしている母さんの所へ走った。
「母さん! 私のいぼ無くなったよ。それに、めぐみのも」
 めぐみは、うん、と言うように頭をこくんとした。
「そう、どうやら、いぼ神様のごりやくがあったみたいね」
「ごりやくって、神様が直してくれたってこと? 薬も飲まないのにどうやっ
て?」
「さあ、どうされるんだろう。父さんが割りばしでつまんだいぼを、神様が受け
取ってくれたってことじゃないかねえ」
「魔法をかけられたんじゃないの?」
 私は、初めて魔法使いにかかわることを口にした。
「魔法は、魔法使いがかけるおまじないでしょう。いぼ神様は神様だから、神通
力でなおして下さったんだよ」
「じんつうりき?」
 私とめぐみは、同時に声を出した。
「母さんにだって分りませんよ。神様のなさることだからね。ありがたくごりや
くをいただいて、心からお礼を言うのですよ。ほんとに良かったね。ところで、
しゅんの手には沢山あったけど、どうなったかねえ」
 玄関の開く音がして、折りよくしゅん兄ちゃんが帰ってきた。
「ただいま! ああ、腹へった」
「いい所へ帰ってきたわ。しゅん、手のいぼはどうなってる?」
「いぼ? おお! 無くなってらあ! かほ、おまえのは?」
「私とめぐみのも、消えちゃった」
「ふうん、あの神さん、おさい銭の分だけはきっちり仕事をしてくれたってわけ
だ。えらい神さんだなあ」
「これしゅん、何てこと言うの。ばちが当たりますよ、そんなこと言って」
「だってさ、お供え物とかしたから、いぼ取ってくれたんだろう? だったら、
おあいこじゃないか」
「もう、あんたと言ったら!」
「それより、腹へったよ」

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