ちょうど太陽が山のはしにかくれ、空にはまだ明るさが残ってはいるけど、ほ
たるのいる小川のそばは薄ぼんやりと暗くなってきていた。
「ほたる、いる?」
「ああ、いるさ。でも、もう少しだな」
 私たちは、しゅん兄ちゃんの後ろについてしゃがみ、ほたるが現れるのを待っ
た。
 少したつと、一匹、二匹と光の尾を引いてほたるが飛び始めた。私は父さんの
おまじないなどすっかり忘れて、ほたる狩りに夢中になった。
 おしりを緑色に光らせながらすー、すーと頼りなげに飛ぶほたるをみんなで追
いかけ、小さな声で歌い、ほたるにそっと網をかぶせる。
「ほっ、ほっ、ほーたるこい。あっちのみーずはにーがいぞ、こっちのみーずは
あーまいぞ。ほっ、ほっ、ほーたるこい」
 虫かごの中は、ポーッ、ポーッと緑の点めつをくり返すほたるで、満員になっ
た。
 ところが、ところがなの。確かにあった私のいぼが、三日ほどすると無くなっ
ているじゃない。
「めぐみ、手を出してごらん」
「はい」
「あ、やっぱり。ほら見てごらん、いぼ無くなってるでしょう」
「ほんとだ。無いね、かほ姉ちゃん」
 私の前に出しためぐみの手にも、いぼは無かった。何だか、魔法をかけられた
みたい。
「ま、ほ、う? ええっ! まさかあ!」
「かほ姉ちゃん、どうしたの?」
「そんなあ、うそだあ。うそに決まってる」
「何がうそなの?」
 めぐみは、心配そうに私を見ている。
これって、家の玄関にいるあの魔法使いのしわざなの? もしかしたら父さん
と魔法使いは、友達なんじゃないかしら。

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