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 母さんにしかられてもどこ吹く風、しゅん兄ちゃんは、あげたばかりでいい匂
いをさせている、鳥のからあげを一つつまんでポイと口にほうり込み、さつまい
もの天ぷらを一個指でつまんだまま、鼻歌を歌いながら二階に上がって行った。
 しゅん兄ちゃんてすごい。いぼが無くなったこと、神様の仕事と思って何も疑
ってない。それに、母さんも。これって、魔法使いが魔法をかけて消したという
方が、ずっと当たっていると思うのにな。それなら、玄関にいる魔法使いのこと
調べてみるしかないわね。
「母さん、今度父さんがお酒を飲んで帰ってくる日ってわかるの?」
 私は、大根おろしを作っている母さんに聞いてみた。
「そうねえ、すぐには無いと思うけど、うんと暑くなったら、暑気払いの納涼会
があるはずよ。どうして?」
「うんん、何でもない。その日がわかったら、必ず私に教えてちょうだいね」
「はいはい、覚えておきましょう」
 でも、一人じゃ心細いよねえ・・。そうだ。
「めぐみ、ちょっとおいで。あのさ」
 私は、めぐみにぶつかるほど顔をよせて、声をひそめた。
「これから言うこと、だれにも言わないって約束できる?」
「うん! できる」
「ぜったい、ぜったいないしょだよ」
「うん!ぜったいないしょ」
「あのね、うちの玄関に魔法使いが居るかもしれないの。だからお姉ちゃん、そ
れをちゃんと確かめようと思っているんだ。めぐみもいっしょに確かめてくれ
る?」
「うん、いいよ。でも魔法使いってだれ?」
「それはまだわからない。見ればわかるよ」
 その日から私は、父さんがお酒を飲んで帰ってくる日を待った。
 暑い日が続いたある日、とうとう父さんがお酒を飲んで帰ると母さんが教えて
くれた。
 ようし、今夜決行だ。
「めぐみ、今夜魔法使いの正体がわかるかも知れないよ」