ミホホには、すぐにそれが何なのか分かりました。
 それは、男の目の中ですでに息絶えた、リキの姿だったのです。

   翌日、パパが出張を切り上げ帰ってみると、ママは出窓の戸を閉め忘
れたことを反省しており、ミホホは、リキの最後をあわれんで泣いてい
ました。
 タックンは、リキの武勇がいかにすばらしかったか話して聞かせ、ノ
ンノは青い顔をして、パパにだっこをせがみました。
 パパはノンノを抱き上げ、みんなに優しい笑顔を向けながら言いました。
「なにはともあれ、みんなが無事でほっとしたよ。こういうことならゴ
キブリに、番犬ならぬ番ゴキとして家にいてもらうのも悪くないね。ど
うだい、ママ?」
「冗談はよしてくださいなパパ。こんなことはもうこれっきり。戸じま
りにも充分気をつけますわ」

 うんうんと、うなずくパパのそばで、ミホホは涙をぬぐいながら
苦笑いしたのでした。

おわり


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