『私の茶道具発見』

勅使河原 宏著  光文社 ¥850

著者の勅使河原宏は、草月流・勅使河原蒼風の長男として生れながら生花とはほど遠く、戦後怒涛のように押し寄せてきた欧米文化に心酔し、 アバンギャルド(前衛芸術)の傾倒。 日本文化や芸術にも開眼し、陶芸を通じて織部の器に出会って、その器にアバンギャルドを感じ、その時代(安土・桃山)の文化に興味を持ったといいます。

アートにまで高めていった織部の沓茶碗に、完璧でないものを受け入れる朝鮮の美意識を感じる。また、破れたり欠けたりしたものをまた繕って鑑賞する美学は、 日本の、それも織部から生れたものとのこと。
織部を辿っていくと利休に出会い、「利休探訪」へとつき進んでいく勅使河原宏は、ご自身の作品映画 『千利休』でも、ポルトガル人のステファンが、 「自国の文化では欠けたものを使うことは考えられない」と茶器を鑑賞し、茶会で利休が織部の器を賛美するシーンも出てきます。

ストイックで非常にシンプルな世界を求めた利休と、デフォルメした世界を追求し、独特の焼物を完成させていった織部。 利休の偉さは、織部のような異端の弟子を積極的に認めたこと・・・など、千利休を通して茶道への世界に踏みこんだ著者の感性で綴られています。

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