「変なかっこうだが、これが以外に便利
なんだよ。こんな具合にすぐ片付けられる」
 じいさんは、道に落ちていたタバコのすいがらを
火ばしではさみ、左側の袋に入れた。
「こっちの袋には、空き缶やペットボトルを入れる。
どうだね、なかなか考えとるだろう」
「ううん、まあ」
「しかし、ぶかっこうだわな。本当はゴミがなきゃ、こんなことせんでもいいんだ
が・・・」
 じいさんは、あたりを見まわしながら、
「目に入ってしかたないのさ、こんなのがね」
と、植え込みの中にあったポテトチップスの袋を拾って、また左側の袋に入れた。
 じいさんは、今でも現役の働き者だった。
 この日以来、ぼくたちは松井のじいさんのことを、じいさんは止めて「松さん」
と呼ぶことにした。

 朝学校へ着くと、校庭にひとだかりがしていてさわがしいんだ。
「どうしたんだい。何かあったの?」
 ぼくは、同じクラスのリョウタに声をかけた。
「うさぎ当番がここへきたらさ、五匹いたはずのうさぎが一匹いないらしんだ」
「おまえさ、うさぎは一匹じゃなくて、一わ二わって数えるんだろう」
「そうそう、そんでもって四わしかいないから、みんなで探してるんだってさ」
「ふーん、戸があいてたとか?」
「それが、閉まってたらしい」
「閉まってて、何で一わだけいなくなるんだよ」
「おかしいだろう?」
 リョウタを問いつめても、しかたなかった。リョウタだって、わかるわけないんだ。

戻る P4 次へ