その日の午後、トシとティラノ公園で話し合っていると、
「けんいち君にとしや君、どうしたんだい、深刻そうな顔して」
「あ、松さん。こんにちは! 松さんこそ、どこかへ行ってきたの?」
 今日の松さんは、ビシッときまっている。
「ああ、知りあいに会って、喫茶店でコーヒーを飲んで来たんだ。久し振りだった
がね、コーヒーはうまくて、死んだばあさんとの昔を思い出したな・・・。それより、
なんだい。君たちはいいことがなんにもなかった、そんな顔をしているぞ」
「うん、それが・・・」
 学校で飼っているうさぎが、一わづつ二回もいなくなったこと。先週の月曜日と
今日のことを松さんに話した。
「今日も月曜か。うさぎ小屋のかぎはどうなっていたんだい」
「今までかぎは、ついていなかったよ」
「ほー、すると外部から入ってきた者でも、うさぎ小屋に入れたんだよね」
「うん」
 松さんは真剣に考え込んでいる。ぼくたちが考えるより、
ずっといい考えが浮かんでいるような顔つきだ。
「その泥棒さん、来週の月曜もまたたって来そ
うだな」
「ええ! ほんと! 」
 ぼくたちは、一緒に声をあげた。
「うさぎは、あとなんわ残っているのかな?」
「三わだよな」
「うん」
 ぼくたちは身を乗り出し、松さんの次の言葉を待った。

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