カーヤは、後ろを振り向いてみました。しーんと静まり返った、見知らぬ道です。
「ああ、どうしよう」
 カーヤは、知らず知らずミュウの手をギュッと握りしめていました。
 見開いたミュウの目が、心細げにカーヤを見上げています。
 おくすり屋さんには、どっちの道を行ったら
いいのでしょう。
 カーヤは、目の前がまっくらになった気がしました。
「おねえちゃん、ア
ーカンさんだよ。ほら、おねえちゃん!」
「えっ!」
 カーヤは、ミュウの声でわれに返りました。
 引っ越して来たばかりの土地で、道に迷ったのです。
 小鳥のさえずりが耳に届かなかったのも、無理はありません。
 ミュウの指さす木に、アーカンさんが澄んだ声を響かせていました。
「アーカンさん、おくすり屋さんへ行く道はどっちかしら?」
 カーヤは、大きな声でたずねていました。
「キョロロロロロ・・・、それは今来た道を引き返すのが一番だけれど、近道なら右の道を
行くといいね」
「ありがとうアーカンさん。ミュウ、近道を行こう」
 カーヤには、深く考えている余裕などありませんでした。おばあちゃんの「ひゅー、ひ
ゅー」が耳のそばで大きく聞こえていたのです。
アーカンさんの言う右の道を選ぶと、ふたりは迷いもなくどんどん歩きました。少し
先をアーカンさんが、道案内のように、枝から枝へ飛び移りながら飛んで行きます。
 笹の原を抜けると、大きな池にぶつかりました。道は、池をはさんで向こう岸へ続い
ています。
「ミュウ、どうしよう」
 カーヤが、水面をのぞき込んだ時でした。
「タートル、タートル、出て来てちょうだい!」
 木の上から、アーカンさんの声がひびいたのです。すると、どこかで「チャポン、チャポ
ン」と音がして、何かが池の中に現れました。

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