なんと、カメの親子が近づいて来るではありませんか。
「タートルや、この子たちを、向こう岸まで運んでちょうだい」
 アーカンさんに、タートルと呼ばれたカメは、ぬーっと首を持ち上げ、
ゆっくりカーヤたちを振り向きました。
「お願いします、タートルさん。急いでおばあちゃんのおくすりを、
買いに行きたいの」
 カーヤは、胸の前で両手を握りしめました。
 タートル親子は、カーヤとミュウを背中に乗せると、すぐに池の中へ
こぎ出しました。
 ヨシがはえている、中の島にさしかかった時です。水面が大きく揺れ、
カ―ヤたちは水しぶきを浴びて、危うく水の中へ落ちそうになりました。
 水上バイクがハンドルを切り、急停車したのです。
 そこから足の長い若者が降り立ち、タートル親子の行く手に立ちはだかりました。
「かわいいおじょうさん。タートルなんかじゃなく、ぼくのバイクに乗って遊ぼうぜ」
 頭の上から呼びかけたのは、アメンボウでした。
「ボーチャ、それは無理だよ。この子たちは、今急いでいるんだからね」
 母さんタートルは、水をこぐ手を止めずに言いました。
「ふん、そんなことかまうもんか。ねっ、一緒に遊ぼう!こっちに乗りなよ」
「ごめんなさい、アメンボウのボーチャさん。おばあちゃんが病気なの。急いでおくすり
を買いに行かなくちゃならないの。おばあちゃんが良くなったら、きっと遊びに来るわ」
「そんなの、信用できるもんか。せっかくここにいるんだ、いっしょにあそぼうぜ!」
 ボーチャはタートルの前に立ちはだかり、カーヤを引っぱろうとします。
「ボーチャ! お姉ちゃんは、いつだって約束は守るよ。急いでいるのが分からないのかい。
手を離せ!」
 ミュウの大きな声で、ボーチャはびっくりし、すごすご手を離しました。
「ほんとうかい。きっと、遊びに来てくれるんだな」

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